『朗読者』
『朗読者』(ベルンハルト・シュリンク著/松永美穂訳)を私も読んだ。言ってしまえば始まりは君とぼくの局地的な恋物語だったが、後になってはそれがただならぬ深遠な愛だったと気づく。君とぼくの心の奥底をのぞきこむような小説だ。それはすなわち私とあなたの心なのか。恋愛は二人にしかわからないことも多いが二人にもわからないことがほとんどで、二人は謎を埋めるように交わり、私はその謎を追うように一気に『朗読者』を読み進めた。
シュリンクの文章は明晰・正直・親密で、読みながら私も動揺したり切なくなったり温かい気持ちになった。そんなこんなの私の気持ちがシンクロする詩があったので、感想にかえて引用します。
ぼくたちが互いに開きあうとき
君がぼくにぼくが君に
ぼくたちが沈み込むとき
君がぼくの中にぼくが君の中に
ぼくたちが消え去るとき
君がぼくの中でぼくが君の中で
そうすると
ぼくがぼくになり
君が君になる (『朗読者』より)
さらに僣越ながら読了後、私の詩も思い出したので再載します。
「うそをめぐるほんとう」
言わないのはうそになりますか
聞かないのはうそになりますか
うそをつきたくない
うそをつかせたくない
うそをめぐるほんとう
さらに言えば『朗読者』の最後の行を読み終えたとき私は突然に『ノルウェイの森』を思い出し、描かれた世界がどことはなしに通じていて重なり合うことに気づいた。すべてはつながっているのだなと。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
chiikoさんの詩に感銘しました
嘘
嘘ついてばかりです、最近
自分にも他人にも
つきたくないけれど、ついてしまう
そんなchiikoさんがリンクしたこの本
興味がありますね
少し読書でも…してみようかな
投稿: とんすけ | 2006.11.12 00:24
とんすけさん、おはようございます!
感銘、どうもありがとう。
気持ちがリンクしたということかな。
うそをついても守りたいもの
それはぎりぎりの本心だと思いますよ。
私は久々の読書でした。ではまたね!
投稿: chiiko(とんすけさんへ) | 2006.11.13 06:13