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2010.12.24

『菜の花と小娘』 志賀直哉

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

今年の朗読発表会では志賀直哉の『菜の花と小娘』を読んだ。不思議・奇天烈な世界だが、自然と必然をさらりと感じる可憐な作品なので、そういうふうに私も読んでみた。

ある晴れた春の日の午後、一人の小娘が山で枯枝を拾っていると、ふと誰かに呼ばれたような気がした。「ええ?」と立ってあたりを見回したが誰もいない。「私を呼ぶのは誰?」と聞いてみたが誰も答えない。しかし小娘はやがて気がついた。声の主が小さい菜の花であることを。雑草の中でただ一本淋しく咲いていた菜の花は、小娘に「どうか私をお仲間の多い麓の村へ連れて行って下さい」と懇願する。小娘は菜の花の願いを叶えてやろうと考えた。

そこから始まる菜の花と小娘の二人旅は、たった一日の出来事だったが、途中には山あり谷あり流れあり。一日は即、一生分であり、二人は一人と明示するかのように結末、私には思われた。菜の花も小娘も互いに見つけて見つけられたのだ。

志賀直哉は『菜の花と小娘』を高等科の学生時代に書いたが、実際に世に発表したのは37歳の時という。初めて書いて大切にしまっていた作文(タイトルは『花ちゃん』)を、時を経て、何度も修訂を重ねて作品に仕上げていった。大作家の一見すっと読み過ごしてしまいそうな小作品を、私も見つけて見つけられて今年も無事に読むことができた(やっぱり最高潮にドキドキ緊張したけれど)。また次の目標に向かって私を重ねていきたいと思う。

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