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2005.08.11

『甘やかな祝祭』

甘やかな祝祭
甘やかな祝祭

いつかの春の感傷旅行のときに旅先の書店で買って旅の途中で読んでいた本です。いつもは旅に出ても本はあまり読まないのに、このときはふと本が読みたくなって、それも恋愛小説のアンソロジーがいい、できれば甘くない大人の恋愛小説をたくさん読みたいと思い、小池真理子さん・藤田宜永さん選の『甘やかな祝祭』を選びました。

田辺聖子さんの『雪の降るまで』は意外な作品でした。田辺さんは艶やかな恋愛を書く方だったのですね。今さらながら新発見しました。主人公は精神的にも経済的にも自立していて、好きな人と時々会えたら幸せだと思っている女性。小池さんはこの作品を短編小説ベストワンに挙げています。私もとても気に入りました。読んで気持ちが晴れやかになる作品で、私が思うに本編中唯一のハッピーエンドです。

ずしりと心に響いたのが小池真理子さんの『天の刻』。いつも愛し愛されていたいけれど、いつも自分がいなくなった後のことを考えて、いつも身ぎれいにして身の回りを整えて生きている潔い女性を描いています。誰にでもやってくる天の刻。私は一体誰の名前を呼ぶのだろう、何と言って呼ぶのだろうと深く考えさせられた作品です。

男性陣では藤田宜永さんの『左腕の猫』とC・ブコウスキーの『町でいちばんの美女』がどうしようもなく泣けました。どうしてこうなるの~と叫びたくなるようなラスト。男の人の書く恋愛小説は、救いようがないものが多いように思います。唯一既読だった宮本輝さんの『夜桜』は、何度読んでも涙はらはら舞いおります。

全作品を通して描かれていたのは、自由になりたくて恋愛している人たちのこと。恋愛のゴールは必ずしも結婚だけとはかぎらない。恋愛→結婚というルートもありだけど、恋愛→自由というルートもあるのではないか。恋愛→結婚→自由というルートならば最高のような気がしますが、とにもかくにも、恋愛すると人は自由になれるんだよと教えてくれた恋愛小説アンソロジーです。夏に読むと、春とはまた違ったセンチメンタルな風が私のなかに吹くかもしれない予感がします。

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コメント

おはようございます。
恋愛が成就したときって、自分の価値を再認識しますよね。
「この人がそのままの私を好きになってくれたんなら、私ってこのままで十分に価値があるんだ(ハートマーク)」みたいな・・。
恋愛や結婚をして自由になれる人は、その自分の価値の認識がきちっと固まった人なんじゃないか・・・なんて、思ってしまいます。

ところで、春に感傷旅行に行かれたことがあるのですね。素敵ですね。「傷つく感じが素敵~♪」という感じです。一人旅だったのですか?
私もいつの日か人間的にも経済的にも自由になって、一人旅に出かけられたらいいなって思っているのですが・・。
そうそう、昨日はその第一歩として、近くの温泉施設に一人で行ってきたのです(^^;

投稿: ケララ | 2005.08.11 09:34

ケララさん、こんにちは!
ケララさんの言葉は揺るぎない愛に満ち満ちていますね。
どうもありがとうございます。
とくに「恋愛が成就したときって、自分の価値を再認識しますよね。」
ひれ伏し圧倒され、それでもって優しく鼓舞されるようなお言葉です。
そのままの私、このままの私がここにいる♡
春の感傷旅行、そういえば気分はひろ子ちゃんでした♪
一人旅はいいですね。
私の家の近くにも温泉施設があるのです。
いつも行きたいなと思ってまだ行ったことがありません。
この夏休み、ぜひ行ってみたくなりました。
どうもありがとうございます。ではまた!

投稿: chiiko(ケララさんへ) | 2005.08.11 11:46

chiikoさん、おひさです。
「甘やかな」という言葉の響きがすてきですね。久しく聞いていなかった日本語を聞いた感じです。
自分は人生の最後には、愛する女性の名前を呼びたいなと思っています。悲しいけど、もし僕の方が後に逝くことになっても、「これから行くよ」って言いたらいいなと。

いつも記事は拝見してます。これからもchiikoさんが綴る美しい言葉に期待してます。

投稿: ミッ君 | 2005.08.11 12:49

ミッ君さん、こんにちは!
おひさ、どうもありがとうございます。
私も書店で「甘やかな」という言葉に出会ったとき、いい響きだなと思いました。それで実際に手にとって読んでみたくなりました。
愛する女性の名前、いいですね。呼んでください。
「これから行くよ」も、じんとくるいい言葉ですね。
再び会うための約束の言葉ですね。

いつも読んでくださってありがとうございます。
うれしいです。とても励みになります。
暑い日々が続きますね。元気でお過ごしください。ではまた!


投稿: chiiko(ミッ君さんへ) | 2005.08.11 15:17

こんばんわ。
旅に出るのって、日常から離脱して違う世界を楽しむものですね。
そんな時、普段と違った本を読むのって、さらに非日常を味わうのにいいかも知れませんね。
日常の生活の中では出てこない感性を、旅っていうのは引き出してくれる、不思議なものですね。
本の内容とは違うコメントになってしまいましたが、記事を読ませていただいて、ふとそんなことを想いました。

投稿: kent | 2005.08.12 01:27

kentさん、おはようございます!
旅は日常とつながっている非日常ですよね。
私はふだん恋愛小説のアンソロジーは読まないのに、この旅に出たときに不思議なことにふと読みたくなりました。
旅のマジックですね。旅はいいですね。
旅ははじまり、旅はおわり、そしてまた日常に戻っていく感じ。
私の本の感想は、本を語るというよりも私を語るものなので、こういうふうに記事を読んでコメントをくださるのはとてもうれしいです。どうもありがとうございます。
きょうもよい一日を。ではまた!

投稿: chiiko(kentさんへ) | 2005.08.12 06:50

こんにちは、chiikoさん。
「恋愛すると人は自由になれる」
いいですね。
この言葉、とても素敵です。
ぐっときました。
じゃ、また。

投稿: とろやま太陽 | 2005.08.12 14:14

とろやま太陽さん、こんにちは!
いいですか。素敵ですか。ぐっときましたか。
どうもありがとうございます。うれしいです。
本が私に書かせてくれた言葉です。
ではまた!

投稿: chiiko(とろやま太陽さんへ) | 2005.08.12 14:43

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